へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


日頃から、思っていたのだ。やはり、戦う時に仲間など必要ない。

自分一人だけの方がどんなに楽で、どんなに愉快なのだろうかと…



「面白い」

誰に宣戦布告するでもなくそう呟くと、口端を歪め自分の存在をアピールさえするように、ヒールを鳴らして歩く。


だがしかし、やはりどうしても歩きにくい片ヒールのブーツに、いっその事どちらも脱ぎ捨てて廊下の隅に放った。


足手まといになるモノならば、ハナから必要ない。



ガンッ、と重たい音を出して、床に転がる純銀が混ざったブーツに伴って、どこからか微かな軋み音が聞こえた。


それに気を張り詰めたのは、一瞬で…風に揺れる扉の音だった事を確認すると、迷う事なくそこを足で蹴り開ける。


廊下の右横に点在する特に何でもないその一室は、本当に何でもなく……

ただ、そこに監禁されていたハズのヴァンパイアと見張り番が居ない事だけが、唯一変わっていた事だった。



「…つまらん」


けれど

それはクイールと一線を置いているあたしにとって、何の問題になる事でもなく…吹っ飛んで壊れた扉を無視して、次の扉に向かう。



……しかし、やはりブーツが無いと"力の加減"が、儘(まま)ならないから困る。


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