へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
愛用であるそれをしっかりと左手に携えたまま、スペアの銃を拾い上げようと、膝を折り深く腰を屈める。
生乾きの髪が肩口からこぼれ、その堅い金属の柄にあと数ミリで指先が触れると言ったところで、カランと背後から聞こえてきた反響音に動きを止めた。
「姉さんって…やっぱり、すごいんだね」
「……」
そればかりはどうにも予想外の出来事で、思わず身を固める。
そして、"まさか"と言う思いに振り向けずにいるあたしの耳に届くのは、カラカラと続けざまに響く軽やかな反響音
その床に打ち付けられた音の回数は、確かにあたしが持っていた“銃弾”の数と、一致していた。
「……」
最早、疑いようの無い事実に、ゆっくりと視線だけを動かしながら振り向く。
…何より恐ろしかったのは、"あたしの銃から全て抜き取った弾"の中に囲まれていても尚、その無邪気な雰囲気を打ち崩していないメフィストの姿
「姉さんみたいに強くて勘が働く、カッコイイ人初めて見たよ!」