へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「本当だよ」
信じてくれたんだね、とばかりに、嬉しそうに頬を綻ばす様子が、血にまみれた口元とは対照的でヤケに不気味だった。
屈託なく歪める唇の隙間から見えた鋭い牙も、決して人間とは相容れない種族なんだと教えてくれる。
「ヴァンパイアブラッドって言うのは、俺達みたいに理性を持ち合わせた吸血能力の高いやつらの事を言うんだ。
だから、よく人間が使う"上級ヴァンパイア"って言葉に当てはまるやつらは、大抵それになるんだよ………って…」
話ながら距離を詰めてくるメフィストに警戒し、あたしは少しずつ後ずさった。
「……何で、後ろに下がるの?」
「…別に、何でもない」
ビビってるなんて思われたくなくて、無駄に咳払いをしながら答える。
「ふーん…で、他は?」
いかにも"何か聞いて下さい"と言わんばかりに、瞳をルンルンと輝かせ期待を見せるメフィストに、あたしは一度視線を上に向けてから聞いた。
「…天井の死体は、一体何の為だ」