へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「ああ、これは俺達の儀式!」
その質問待ってました、とばかりに張り切って返答するのを見て、この問答の何が楽しいのかと、内心首を捻る。
「儀式…?」
「うん、吸血によって例え命が一つ減ったとしても、また新しい命が生まれて…俺達の"エサ"がなくなりませんよーに、ってお願いする意味を込めて」
「……へぇ…」
ヴァンパイアのイメージらしからぬ、願掛けめいた儀式に、思わず気抜けた吐息がこぼれた。
神を冒涜する存在のくせに、祈りを捧げるのか…?何て、"けったい"な奴等だ。
「他は?」
「…は?」
「他の質問は…!?無いの!?」
ところが、何をそんなに聞いて欲しいのか…あたしと自分の間にあった距離をあっという間に詰め、鼻息荒く繰り返してくるメフィストに驚く。
…と言うか、さっきからちょっと目を離した隙に、瞬間移動のごとく別の場所にいるコイツの能力は、一体何なんだ……?
「他に、って…」
「あるよね!?絶対、あるよね!?」
「……」
フンフンと額にかかる熱い鼻息が少し鬱陶しかったが、こんな近距離にいる奴から目を離すわけにはいかず…
あまつさえ、何気にあたしよりも20センチ近く高い身長差によって、少し見上げた首が痛くなった。