へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「何で俺が"夜は人間になる"か、一番聞きたいとこだよね!?」
聞き逃がした事になんかはさせまいと、ガシリと両肩を掴んで必死に言い募ってくるメフィストに、顔がひきつる。
いや…正直言って、一番どうでもいい部分だ。
特に、奴がお目当てのヴァンパイアブラッドじゃないとなると、尚更……
「別…」
「生まれつきなんだよね!!」
「どうでも…」
「俺だけ、特異体質だったんだよね!!」
「……」
「だからその分、他のやつらの倍は、昼間の内に血を吸わないと大変な事になるんだよね!!」
あたしの言葉を遮って、自ずから真実を暴露してくるのに、最早質問を迫った意味がないではないかと思った。
「分かった…分かったから…」
「何で姉さんは、ヴァンパイアブラッドなんか探してたの?」
近すぎる顔を押し退けようと口元に置いた手の奥から、メフィストがモゴモゴと問いかけてくる。
その言葉に、あたしは一瞬だけ動きを止めた。
『ごめんね、食べちゃった』
頭に浮かぶのは、あの時の陰惨な光景と、忘れたくても忘れられない無邪気な微笑み