へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「…さぁ、何でだろうな」
適当に取り繕って誤魔化せばいいものを…何故だか、曖昧な瞳に見つめられると何も言えなくなり、俯いた。
「大丈夫!絶対、見つかるよ!!」
それを落ち込んでるとでも解釈したのだろうか…尋常じゃないくらいの力で手を握り締めてきたメフィストに、眉をひそめる。
「痛っ…」
「俺と一緒にいれば、絶対に会えるハズだから!!」
元々、怪力であるヴァンパイアだからこそ、容赦なく力を込められると抗えず骨がミシミシと鳴った。
その上、赤黒く伸びた爪が、皮膚に食い込み肉を裂く。
「離…っ…」
話に夢中になりすぎて、一向にあたしの苦痛に気付く様子の無い奴の腕を掴み、手を振り解こうとしたが……思わぬ言葉で、それは制された。
「だって、ヴァンパイアブラッドは、みんな俺を殺しに来るんだから!!」
「…な、に…?」
驚きと言うよりは、全くもって予想外のセリフに、深く推考する間もなく顔を振り上げる。
すると、これまた奇妙な事に…何かに興奮したようにキレイに通った鼻筋の横にある小鼻を膨らませ、死んだ人間みたいに瞳孔を大きく見開いたメフィストの顔があった。