へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「大丈夫だよ、姉さん。痛くするつもりはないから…」
「……っ…」
拒否の言葉を口にしようとした唇は、虚しいほどに何の音も発せず、ただ空回りする。
首筋にかかる髪の毛をソッと払われ鎖骨をなぞられると、その冷たい指先の感覚に、生理現象で熱い吐息がこぼれた。
…こんな時でさえも、感覚だけは一人前に機能している自分の体が憎らしい。
そして、露になったそこに、鋭い牙を持ったメフィストが、ゆっくりと噛み付いてくる。
「……ぁ…」
最後の抵抗にやっとこぼれ出た声は、思いもかけず少し艶がかっていて、自分でも耳を塞いでしまいたかった。
ゆっくりと…長く鋭い牙が、体内に侵入をしてくる。
身体の中枢を揺さぶられるような、奥の方で目覚めてはいけないナニかを呼び覚ますような…そんな背徳的な感覚が、全身を包む。
…もうすでに、意識は飛びかけていた。