へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「……怒ってる?」

だから、そう問いかけられたあたしは、静かに首を振った。


怒る理由なんて、どこにもない。


それよりも、一番叱り倒さなきゃいけないのは、他でもない自分自身で──…



「はい、食べて」

窓の外を眺めているあたしの前に、一皿のスープが置かれた。


白いミルクベースのスープの中には、オレンジや緑色のカラフルな野菜が、ゴロゴロと入っている。

それは、初めて虚無の白い世界に、鮮やかな"色"が混入した瞬間のようだった。



「…いらん」

鼻腔をくすぐるいい匂いに空腹の腹を誤魔化し、あたしはソッポを向く。


油断すると鳴りそうになる腹の虫を、腹筋に力を入れる事で耐えた。



「姉さん…食べないと、体に悪いよ?」

心配そうな声を出しながら、ベッドサイドにあるイスに腰を下ろすメフィストに、勢いよく振り返る。



「いらんったら、いらん。余計なお世話だ、早く消えろ」


「……やっぱり、怒ってるじゃん…」

ツッケンドンに言葉を突きつけ返したあたしに、メフィストはイジけたように唇を尖らせた。



そして、暫くは無言の時が流れ…ついには、その問いで口火を切る。


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