へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「……本当なのか?」
一瞬足りとも、窓の外から目を離さずに聞くあたしに、彼は優しい声で答える。
「そうだよ。嘘なんて、一つもない」
「………そうか‥」
ならば、"話は早い"と思った。
「姉さん…?」
突如、思い立ったように体を回転させ、ベッドを下り始めたあたしに、メフィストが怪訝げに声をかけてくる。
少し体重を傾けただけで、ギシギシと鳴るスプリングの煩さに、眉をひそめた。
「帰る」
ハッキリした意思をそこに秘めたまま、あたしは勢いよく立ち上がる。
「か、帰るって…どこに…っ!?」
「決まってるだろう。クイールの支部だ」
慌てて押し止めようとしてくるその体を押し退け、真っ直ぐに廊下に続く扉に向かった。
「待っ…」
窓から見た景色は、地上よりも少し高かったように思う。
…だとすれば、きっとこの部屋は、建物の2階か3階に当たる場所なのだろう
すると、まずは廊下に出た後に、階段を探さなければいけないのか……しかし、先程見た庭の様子を見る限り、この建物自体も大して広くはな…
だが、ツラツラと脱出経路を考えながら開け放った扉の前に、見たこともない可憐な少女が、一人佇んでいる事に驚いた。