へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「……本当なのか?」

一瞬足りとも、窓の外から目を離さずに聞くあたしに、彼は優しい声で答える。



「そうだよ。嘘なんて、一つもない」



「………そうか‥」


ならば、"話は早い"と思った。



「姉さん…?」

突如、思い立ったように体を回転させ、ベッドを下り始めたあたしに、メフィストが怪訝げに声をかけてくる。


少し体重を傾けただけで、ギシギシと鳴るスプリングの煩さに、眉をひそめた。



「帰る」

ハッキリした意思をそこに秘めたまま、あたしは勢いよく立ち上がる。



「か、帰るって…どこに…っ!?」


「決まってるだろう。クイールの支部だ」

慌てて押し止めようとしてくるその体を押し退け、真っ直ぐに廊下に続く扉に向かった。



「待っ…」


窓から見た景色は、地上よりも少し高かったように思う。


…だとすれば、きっとこの部屋は、建物の2階か3階に当たる場所なのだろう


すると、まずは廊下に出た後に、階段を探さなければいけないのか……しかし、先程見た庭の様子を見る限り、この建物自体も大して広くはな…



だが、ツラツラと脱出経路を考えながら開け放った扉の前に、見たこともない可憐な少女が、一人佇んでいる事に驚いた。


< 156 / 225 >

この作品をシェア

pagetop