へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「だ…‥誰、だ…?」

思わず、そんな感想が口からこぼれ出て、目の前の金緑色の少女に釘付けになる。


意思の強い鮮やかな瞳、ふっくらとして白いもち肌を窺わせる頬、色づき妖艶に引き結ばれる唇


…そのどれもが、明らかに"魔性"を表していた。



何より、白い虚無の世界においては、尚更異形ともなる金緑色の輝きに、目を奪われる。


それは…違えようのない、事実だった。



「…メ、メフィスト……お、前…」

少女に指をさしたまま、驚愕でゆっくりと振り返るあたしに、本人は至って呑気に右手なんぞを上げて答える。


「うん、俺の妹」

その何ともアッケラカンとした様子に、瞬間的に怒りが芽生えた。



「バカな…!そんなの聞いてないぞ!?」

大股で彼に歩み寄り、胸ぐらを掴みあげる。


急に首元を圧迫されたメフィストは、ぐぇっと奇声を発し、苦しさに眉根を寄せた。



「…う、うん…だって、姉さん…何も……ちょ…苦し……っ…」


「冗談じゃない!ヴァンパイアブラッドが二匹もいる巣窟で、のうのうと羽を休めていられるか!!」

ガクガクとその体を揺さぶり、早くココから出せと訴えかける。


あたしとメフィストの二人分の重みを感じた床板が、ギシギシと不穏な音を立てた。


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