へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「いけません!!」
すると
それまでビスクドールの人形のように大人しく、可憐な様でずっと立ちすくんでいた少女が、見た者の期待を裏切らぬ、よく通る澄んだ声で叫ぶ。
思わずピタリと動きを止め、ゆっくりと振り返ると…淡いピンクのレースで装飾過多のドレスを着た少女が、緩やかな曲線美の髪の毛を携えたまま、強い眼差しでコチラを睨み据えていた。
「あ、ああ…」
その見た感じからして、"お姫様"を意識した格好と、それに違わぬ美しい容姿を持ち合わせている少女に
何故だか抵抗の意識が削がれ、掴んでいたメフィストの首元をアッサリと離してしまう。
あまつさえ、室内よりも一段と薄暗い廊下の闇をバックにして立つ少女の姿は、何者をも服従させてしまう程の威圧感を纏っていた。
それは…もしかしたら、あたしの"子供が苦手"な性分が、所以であるのかもしれない。
「…うっ…、ゲホッ、ガハッ…!グフッ……!!……あー……死ぬかと思った…」
過剰なくらい咳き込んでみせるメフィストに、それが"わざと"ではないかと思ったのは…あたしと少女の間を行き来する視線に、わずかに敵意のようなものを感じたからだった。