へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「メ、メフィスト…!何とかしろ!!」

それには流石のあたしも面食らい、慌てて声をあげる。


「わ、分かった!マティー、落ち着い…ぃぃ‥ッ!?いだだだだだ!!」


だが、肝心のメフィストはと言うと…あたしのその言葉に素直に頷いたまでは良かったものの、いとも容易く少女に反撃し返されているのを見て、思わず眉根を寄せた。


ヴァンパイア特有のあの鋭い牙で噛まれているからには、絶対に痛くないハズはない。



「……ッ、この役立たず!!」

噛まれる痛みにワンワンと泣き喚き首を振り続ける奴に、あたしは早速に見切りをつけ、ひたすらに少女の真下から逃れるチャンスを探った。


そして、それは予想外に早く…泣き喚くメフィストに気をとられて、少女が油断するのを見計らって、一発の蹴りのお見舞いと共に、そこから退避する。


仮にもヴァンパイアブラッドだからと、加減せず全力で顔の横を蹴りつけたはいいが……力無く床に倒れ込む少女の華奢な体つきを見て、やはり少し戸惑った。



…あたしは、どこまでも"子供"が苦手らしい。


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