へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
ところが、そんなあたしの懸念をよそに、まるで三流逸話の悲劇のヒロインのような仕草で、ゆるりと振り返れば、少女はどこか恍惚とした瞳で見つめてくる。
「嗚呼…やっぱり、貴女はわたくしが探し求めていた"最高級の人材"ですわ」
「……は?」
すっかり、抗議の言葉を浴びせられるとばかり覚悟していたあたしも、意外ともとれるその言葉に、思わずポカンと口を開けた。
けれど、少女の瞳はどこか本気で…蹴られたハズの頬も、アザになるどころか赤い腫れ一つとしてない。
こんな陶器めいた白い肌をしているのに、そんな意外すぎる程の頑強さを持つ少女が、改めて普通の人間なんかではないのだと、思い知らされた。
「オイ!こいつは、一体何なんだ!?」
その勢いのまま、あたしは未だ噛まれた痛みに身悶えするメフィストに向かって、指をさし問う。
少女の人並外れた奇抜な外見よりも、その一癖も二癖もありそうな性格に、多大なる"難"を感じた。