へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「無理ですわ」
すると、そんなあたしの言葉を遮り、凜とした声で告げられたのにハッとする。
いつの間にか、少女がすぐ足元まで来ていて…くりくりとした大きな金緑色の瞳が、ジッとコチラを見上げていた。
「無理?…何が、無理なんだ」
まるで、ずっと欲していた獲物を見付けたように、感情の読めない瞳を爛々と輝かせ、唇を歪める少女に寒気がする。
「ここが、どこだか…賢いお姉様なら、お分かりでしょう?」
何故か、露になったあたしの太股に手を這わせながら、愛しそうにその白い指でなぞる仕草に、少しだけ身震いした。
「…ruin area(ルーインエリア)だろう」
「正解です」
考えるまでもなく分かる答えに、あたしは自嘲めいた笑いをこぼして答える。
ルーインエリア──人が住む地区からは遠く隔離された地域…いわば、ヴァンパイア達の寝床となる荒れ果てた大地の事だ。
そこは、クイール内でも不用意に足を踏み入れるなとキツく言い渡されている場所であり、あたし自身においても、用心して今まで一度も侵入する事が無かった場所。
だが、まさか、こんな形で足を踏み入れる事になるとは……