へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「でしたら、お話が早いですわね。いくら今が昼間とは言え…ここは、数多くのヴァンパイア達が生息する地域。
…それなのに、お姉様みたいに"すごくいい匂い"のする方が、トボトボ歩いていたらどうなるのでしょう…?」
試すように、上目遣いで探りを入れつつ、体中をまさぐってくる手に、小さく溜め息を吐く。
「メフィスト…こいつを何とかしろ」
呆れに頭を抱え、近付いてくる顔を押し退けながら、あたしは声をあげた。
少女自身が、どう言うつもりか分からないが…まるで、よく足先にジャレてきてうざったくする犬みたいだった。
「良かったねー、姉さん!マティーは、強くてカッコイイ女の人が、"大好物"なんだよ」
微笑ましいものでも見ているように、ニコニコと頬の筋肉を緩め返答してくるメフィストに、一瞬にして腸が煮えくり返る。
「ふざけるな!あたしは、コイツの餌じゃない!!」
怒鳴りつけると同時に、腹部にまとわりついている体を押し退けようと、力を入れてみるのだが……
可笑しな事に、あんなに華奢な体がビクリともせず、逆に胃液が込み上がってくるくらい、強く締め付け返されたのに、軽い吐き気を覚えた。