へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


だが、そのおかげで、少しだけこの少女のおぼろげな輪郭が掴めて来る。


少女は、激しく変人で、激しいバカ力の持ち主で…ある意味、メフィストに"そっくり"だった。



「兄!やっぱり我慢なりません…!!先に、わたくしがイタダキます!!」


「待…っ…」

その上、自分の兄の事を「兄」と呼ぶ理解不能さがついてくる。


あたしの事は「お姉様」で、何で実の兄の事を「兄」呼びなのか、全く理解出来なかった。


そうして、見た目とは裏腹の怪力少女に押し倒され、ギリギリと圧迫感が強くなってくる腹に、さっきメフィストに勧められたシチューを食べなくて良かったと思う。



「メ、メフィスト!!はや…っ‥」


屈辱的にも、奴に助けを請うしかないあたしは、敵陣のエリアに身ぐるみ剥がされた状態で投げ込まれた自分の不甲斐なさを感じながらも、叫んだ。


徐々に、体をゆっくりとせり上がってくる少女の冷たい指と、ウェーブがかった長い髪の毛に、自分の存在はやはりコイツらにとって"エサ"でしかないんだと改めて認識し、唇を噛み締める。



食される者と食す者…この世界の連鎖は、未来永劫変わり続ける事のないピラミッドなのかもしれない。


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