へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「あー…もったいないよう。せっかく、今回は美味しそうに出来てたのに…‥」
至極、残念そうに唇を尖らせると、メフィストは残った果肉を拾い上げようと手を伸ばし……
「同じだろう」
低く呟いたあたしの声に、動きを止めた。
不思議そうに顔を上げる奴の金緑色の瞳が、寸分のブレもなくあたしを捉える。
「同じだろう…お前も、あたしと」
人の命を目の前にあるトマトと同じように、簡単に潰しては壊すんだ。
それは致し方ない事なのか、はたまた、どうしようもない世の理なのか。
だけど、こう言う時に限って、メフィストは察し良くあたしの言わんとする事を理解するのだ。
「俺達は、生きる為に血を吸うんだ」
ちょっぴりだけ可笑しそうに笑って言ったメフィストに、少し腹が立つ。
分かっている。
それは、仕方無い事なんだと。奴等にとっては、"常識"な事なんだと。
……でも、どこかであたしの"人間側"の部分が、それを許せないでいる。
滑稽な話だ。
人間にもヴァンパイアにも馴染みきれない、中途半端な「ゴート」と言う存在のくせに……