へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「人間は頭がいいから、そんな事を考えるのかもしれないね」
そう言ったのを切っ掛けに、メフィストが力強く、定期的に振るう"クワ"の音が、この世界に何かを生み出す創造音に聞こえた。
「ヴァンパイアブラッドも、人間と同じ知能があるのだろ?」
信じたく無い事だったけれど…マティリアの存在を間近で見てしまった以上
コイツと同じヴァンパイアブラッドが、この世にたくさんいる事実を認めなければならない。
人間と同じ知能を持ち、人間よりも高い身体能力を持つヴァンパイアブラッド…これ以上、奴等が繁殖しない事を願うのみだった。
「知能はあっても、思考はないよ」
一度震っていた腕を止め、額にかいた汗を袖口で拭うメフィストに、あたしは眉を寄せる。
「何が違う?」
素足で出てきていた為に、地面を這うように吹き荒ぶ風が、ねぐりじぇの下から入り込んできて冷たかった。
すると、メフィストは顔だけで振り返り、少しだけ可笑しそうに優しく目元を緩ませると言う。