へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「"考える"力はあっても"思う"力はない、って事」
そんな、あまりにも"人間くさい"事を言ったメフィストに、あたしは目を剥いた。
今は昼間だから…奴は歴としたヴァンパイアなハズなのに、その思考は夜中に人間になった時と、何ら変わり無いように見える。
「随分、哲学的なこと言うんだな…」
感嘆とも驚きともとれる曖昧な吐息が、口からこぼれた。
「あ、そーそー!そのテツガクってやつ!!」
あたしの言葉に何を納得したかは知らないが、メフィストは満足そうに頷くと、体勢を元に戻してまた農作業を再開させる。
ザクッザクッ、と掘り返されて山になっていく土が、無から有へと何かを転進させていくように見えた。
「何、作ってるんだ?」
懸命に土を耕し畑の土台を作っている姿に、思わずそう尋ねる。
「ジャガイモ!姉さん、シチューは好き!?」
ひどく楽しそうな声で、背中越しに問いかけて来たメフィストに、あたしは困惑した。
「分からん、食った事がない」
出来るだけアッサリと返答したつもりなのに…それに違和感を感じたらしい奴が、驚いた顔で振り返ってくるのに、"失敗した"と思う。