へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「…‥食べたことがない?」
「ああ」
「…何で?」
「あたしがシチューを食った事がないと、何か問題があるのか」
そう言って、体よく誤魔化してみようと思ったのだが……
「姉さん、"食べられない"人なの?」
やはり、コイツに口先の出任せは通用しないようだった。
「食べられないんじゃなくて、食べないだけだ」
「同じ事だよ」
「違うな」
「同じだよ」
今回はヤケに突っかかってくるメフィストに、あたしは怪訝げに顔をしかめる。
「何が、そんなに不満なんだ」
もうそれ以上、問い詰めてくれるな…と言う意味合いも込めて、少し強めに言い放った。
すると、メフィストは何かを思い悩むように、一度視線を地面に下ろした後
聞き取れるかどうかさえ分からない、至極小さな声で話し出す。
「昔…食事を出来ない子がいたんだ」
「何?」
何の前触れもなく、突然始まった昔話に、あたしは困惑した。
しかし、メフィストは特にその思い出話を取り止める素振りもなく、淡々と話し出すものだから…仕方なく、黙って聞き入る。