へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「ううん。食事を"出来ない"ってよりは、"しない"子だったんだ」

誰に返答を求めるでもなく、内なる自分と会話をするように言葉を紡ぐ奴に、今までとは少し違う雰囲気を感じとった。


それは、どこかしら哀愁を漂わせるものであり、そこはかとない憂いも帯びていた。



「そいつもお前と同じ、ヴァンパイアブラッドだったのか?」

その後は何も言葉を続けず、無言で農作業を再開したメフィストに、あたしは静かに問い掛ける。


珍しく、何も反応を寄越して来ないことが、余計に辺りを不気味な静寂にさせた。



枯れ果てて、白いチリ以外、全く何もない世界

その中の一角に堂々と敷かれた赤茶の土は、本当に野菜と言う命を育てる事が出来るのかとさえ、疑う程だった。



「知能があったから、その子は拒んだんだ」

ザクッと土に深く刺さるクワの音が、確かな命の響きをそこに感じさせる。



「…何をだ」


メフィストは、何の為に畑を耕す?


「血を吸うこと」


それは、自分の為?


夜には人間になってしまう自分の空腹を満たす為に、自らの手で食物を作り上げるのか


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