へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「ヴァンパイア、だったのにか?」
そして、怪訝げに問いかけたあたしの言葉に動きを止め、メフィストは何がそんなに愉快だったのか
クックックッと忍び笑いに肩を揺らすと、次の瞬間には静寂を切り裂く大きな声で笑った。
あたしが、ついに本性を表したかと唇を噛み締め、切り株の上に置いた両手を強く握り締めたのに対し、メフィストはゲラゲラと呼吸困難寸前のごとく爆笑を続けながら、振り向く。
「うん!確かに、みんなにそう言われて、からかわれてた!!」
何と、思い出し笑いの種類であったらしいそれは、目に涙を溜め、いつもと変わらぬ腑抜けた笑顔を見せたメフィストによって、簡単に終止符を打たれた。
コイツの笑いのツボは、どこにある?
「命を奪ってまで人間の血を飲みたくなんかない、って…そう言って、その子はすぐに死んじゃった」
けれど、まだ顔に若干の薄ら笑いを浮かべながら、目元に溜まった涙を袖口で拭い取るメフィストは、どことなく寂しそうでもあった。
人間に感情があるように…知能を持つヴァンパイアに"何かを思う気持ち"があっても、それは決して、可笑しい事ではない気がする。