へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「なに…!?姉さん、何…!?」
あたしが何にイラついているのかも分からないようで、あたふたと慌てふためく様子に、どうしたものかと考える。
けれども、気分転換に見回した風景は本当に殺風景で……何もない世界にポツンとそびえ立った粗末な家屋に、気持ち程度の畑、その周りを取り囲む薄っぺらな煉瓦塀が、より重い寂莫感を醸し出していた。
真っ白なキャンパスの上に一筆だけ置かれた黒い点の塊のように、この世の総ての"有"がココに一気に凝縮されている気がする。
「今、近くに他のヴァンパイアはいるのか?」
白けぶり、一寸先さえ見えない濃霧に目を凝らし、あたしは神経を集中させた。
だが、どう言うわけか…ここに来てから、自身のヴァンパイア察知能力が正常に働いていない事を自覚していた。
「多分…‥いないと思う。もし、いたとしたらマティーが、真っ先に動いているハズだし」
だいぶ痛みから回復したらしいメフィストが、危機感の欠片もないのんびりとした声でゆっくりと応答するのに、あたしは舌打ちをする。