へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
嘘だろう…?あんなに、100人以上もの人間の血を飲んでいて、今更足らなかっただと……!?
「お、お前…じゃあ、普段はどうして…」
「だから、畑を作ってるんだよ。自分で食料を栽培して、人間になった時の夜に食い溜めをしてる」
のたうち回るのを急に止めたメフィストは、ぼんやりと何もない虚空を眺めながら言う。
雲も何色もない真っ白な空は、満たされない奴の空腹に似ているのかもしれなかった。
「変わった奴だな」
「よく言われる」
色んな意味を含めて言った言葉は、自嘲とも取れるそんな返答にかき消される。
何気なく振り返って見やった先には、白灰色に色褪せて、強風に吹かれればすぐにボロボロと剥がれ落ちてしまう程の外壁と、そこに巻き付く腐った蔦の葉が印象的な家があり、中からはマティーの楽しそうな笑い声が聞こえていた。
それは、一見何もないように見えるこの世界にも確かな命があり、逆に言えば、あたしは本当に取り返しのつかない 退廃した世界の奥地にまで来たのだと自覚する。
ここから、人間の住む安全エリアまでどのくらいの距離があるか分からない。