へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「オイ」
しまいには、腹の虫と連動で歪なメロディまで紡ぎ出した口笛に嫌気がさし、わずかに頭を抱え呼び掛ける。
「……姉さんが、畑仕事をやってくれる?」
「誰がそんな話をすると言った」
ピタリと口笛を止め、明らかに期待がかった声でそう返されたのに、思わず硬い声で即答した。
そして、「ケチー」と、小さな声で抗議をされるのを無視しつつも、あたしは畑の隅っこでひっそりと育っていたトマトに目をやる。
「分かってるよ」
先に何かを口にしようとした言葉は、メフィストによって先手をとられ、ピクリと体が震えた。
歪みそうになる唇を必死に堪える。
「姉さんの血が、もう意味を成さないものになっているのは…分かってる」
憐れむように、嘲笑するようにさえ、聞こえるのは…あたしの勝手な被害妄想だろうか?
「幻滅しただろう」
次に何かを言いかけたのを遮り、あたしは真っ直ぐに奴を見た。
動揺するな。
弱味を見せるな。
平然と、言い放て。