へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「たった一人のゴートの生き残りの血が、こんなに腐っていたなんて」
──…今、あたしはどんな顔してるんだ?
「姉さ…」
「お前がどう言うつもりで、あたしをココに連れて来たかは知らないが、もう"不味い血"しか持ち合わせていないあたしに、何かを期待するだけ無駄だ」
ダメだ、止めろ。余計な事を考えるな。
怯むな。
前だけを見てろ、強気に言い放て。
あたしを哀れむのは、あたし自身だけでいいんだ───…
「もう、あたしはゴートの末裔として何の価値にもならな……」
「どっちかって言うと、ビックリした」
──…自分は、いつの間に目蓋を閉じていたのだろう?
一気に言い募ろうとしていた言葉を遮られ、あたしは仕方無くゆっくりと重い目蓋を上げた。
「どっちかって言うと、ビックリしただけ。すごく、ヴァンパイアを憎んでそうな姉さんなのに…」
そこで一度、言葉を止めると、ゆっくりと体を起こし、どうしてなのかひどく優しげに笑う。
「どうして、その人だけには心を許したの?」