へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「…姉さんは、どうしたい?」
もうメフィストの腹の虫は、主張する事を諦めたのだろうか…
そうとさえ思える静寂が、辺りを大きく包んでいた。
「何がだ」
あたしに拒否権などないのに。それを分かっていても尚…奴は、あたしに聞くのか。
「あそこに、帰りたい?」
メフィストが言う"あそこ"が、クイールの支部だと理解をしたあたしは、俯けていた顔を上げた。
「帰らせるつもりなんてないだろ」
帰らなくてもいい。
そんな思いが、心のどこかに無かったと言ったら嘘になる。
「どうかな……でも、せっかくみつけたゴートの生き残りを手放したくないってのは、本音だよ」
再びゴロンと土の上に横になり、何もない虚空に腕捲りをした手を伸ばすメフィストは、いつも本当に正直だ。
「何の得もないぞ」
「分からないよ。まだ、ゴートの能力を全部把握してるとは限らないし」
限りなくゼロに近い可能性でも、自分にはまだ使い道があるのかもしれないのか、と…何となく、儚い安心感を抱く。