へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「よし!姉さん、見てて!!今から、俺の奇跡のクワ使い見せてあげる!!」
謎の鼓舞発言と共に、ヴァンパイアの身体能力を使い、目にも止まらぬ早さで次々と畑を耕していくメフィストに呆れ、あたしはもう興味をなくして、視線を家の方に移した。
すると、一階のリビングに当たる場所から、口惜しそうにレースのハンカチを噛み締めて窓にヘバリつくマティリアの姿を見とめ、その悪鬼なる形相に軽く身震いする。
何故、そこまでして好かれているのかも分からなければ、そのマティリアの背後に佇むアッシュとか言う大男の素性も、よく分からないままだった。
けれど、彼らは恐らく特異体質のメフィストと違って、純潔なるヴァンパイアブラッド
よって、いくら煌々とした太陽が顔を出さない闇の地域とは言え、真っ昼間から堂々と外には出られないのだろう。
…だとすれば、この静けさの理由もつく。
「夜は、ここら辺騒がしいのか?」
誰もお前の勇姿など見ていないと言うのに、一人で勝手にヒートアップし、結構な遠くまで畑を耕しに行っていたメフィストに、あたしは問いかけた。
明らかに、畑の領地を越えている。