へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「お前に…‥」
「姉ですわ」
「…は?」
それを後からより大きく知らしめてやる為にも、多少はその挑発に乗ってやろうかと、あたしは口を開きかけ…‥遮るようにして言われたマティリアのセリフに、度肝を抜かれた。
「お姉様ですわ、わたくしの。歴とした」
前を見据え、キッパリと言い切ったのに、開いた口が塞がらない。
「姉…?オマエら兄妹は、二人だけのハズじゃなかったか?」
突然すぎる激白に、流石のソイツも少し面食らったように訝しんでいた。
「ええ、昨日まではそうでしたのだけど……今日からはめでたく、三人兄妹となる事が出来ましたの」
頬に手を当て、ポッと顔を赤くするマティリアに、驚愕する。
冗談じゃない、と思った。
もちろん、こうして目の前に敵が現れたからには、あたしも戦うつもりでいる。
だが、コイツらと同じ兄妹だと思われる事になると、また話が違ってくる気がした。
「オ、オイ!勝手に…」
「さぁ、これでお分かりになったでしょう!?どこからでも、かかってらっしゃいな!!」
頭一個分違うあたしとの身長差を縮める為なのか、何故か、畑の真ん中にある切り株の上に仁王立ちになり、チョイチョイと挑発的なポーズを取るのにゲンナリした。
どうしてこの兄妹は、こんなにも自分勝手なのだろう。