へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
────…ダンッ!
そんな忌まわしい言葉をかき消すように、あたしは棺製のロッカーを足で踏み鳴らした。
純銀で出来た重たいブーツが、その細いヒールを伝って棺ロッカーの蓋に穴を開ける。
……どころか、少し“加減”を間違えたらしいあたしの足は、銀十字が描かれたその蓋を真っ二つにへし折った。
「失礼」
…が、それにあたしは涼しい笑顔でそう答え、何事も無かったように蓋をどけてその中から団服を取り出し、着替え始める。
周りの視線が痛かったけど、そんなの気にしない。
……と言うか、あたしの神経はそもそも、そんなにヤワには出来ていない。
ガーターベルトの上から、腿丈のプリーツスカートを着込み、その下に二丁の特製拳銃を仕込む。
クソ重たい純銀メッキが張り付けてあるロングブーツのヒールを、コツコツと床にぶつけてその感覚も確かめた。
ついでに、動きやすいように肩口とヘソ丈に切られた上着のフィット感を確かめ、黒光りするレザーの光沢に満足する。
「…よし」
そして、最後に小さくそう呟いて、“風に煽られやすい”ように設計されたそのマントに身を包んだ。