へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「コイツらは、わたくし達純血種の血を狙っているのですわ!!」
迫り来るヴァンパイア達に一切怯む様子もなく、マティリアは慣れた様子でジャキンと爪を極限までに伸ばすと、その顔を威嚇した犬みたいに歪め、紅い唇の間から鋭い牙を覗かせる。
「純血種…?」
けれど、その真意を問いただすよりも先に、頭上から襲いかかって来た飛翔ヴァンパイアの攻撃を、あたしは咄嗟に身を転ばす事で避けた。
足を浮かせ、後ろに引っ張られる形で背中から凹凸の激しい地面に着地する。
大小さまざまな石ころが転がるそこに打ち付けた背中には、強い痛みが走り、薄いねぐりじぇの生地にめり込んでくる砂利の感覚に身を捩りたくなったが、それを必死に耐え、目の前に迫り来る攻撃から視線を外さなかった。
弧を描いた長い爪が、あたしの身を八つ裂きに切り裂かんと降りかかってくるが、背中が地面に着くまでの0.1(レイコンマイチ)秒の間に、側にある耕された土壌の一角に小さな手持ちサイズのスコップが二本刺さっている事を確認していた為
地面に寝そべると同時に、それを両手で掴み取り、襲い来る爪の攻撃を腕を交差してガードを固めつつ防いだ。