へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
ヴァンパイアの爪が、手持ちのスコップと交差する事で耳障りな金切り音が反響し、グググ…と、どちらも譲らぬ力押しの攻防戦が、凄まじい程の至近距離で行われる。
闇の中で濁って白灰色に冴えるヴァンパイアの瞳が、右手に持ったオレンジ色と左手に持った緑色のスコップによって、金緑色を映し出し、隠しようのない狂気に輝いていた。
「jamkgtjm.jaj」
飛翔ヴァンパイアと競り合うあたしに、地上から駆け付けていた雑魚サッカーが、劣悪で意味不明な単語を発しながら近付く。
それを唯一、自由に動く足で遠くに蹴り飛ばしながら、あれ程までに鮮やかな金緑色が似合うメフィスト達は、やはり特別なのだと悟った。
そうであるならばこそ、あたしは、もっともっと、奴等に聞かなければいけない事がある──…ッ。
そうして、「退け」と言う思いを込めて、のし掛かってくる飛翔ヴァンパイアを渾身の力で押し返し、立ち上がった振り返り様に、手にしていたスコップを二本とも奴に向かって投げ飛ばした。
空を切ったそれらが、寸分の狂いもなく、牙を剥き出しにし醜悪な顔付きをしたそこに刺さる。
途端、それまで確かにあったハズの"生"が、サラリと灰になって崩れ、虚無の世界と融解するように川の形に流れて行った。