へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
それを確認した後、あたしはすぐさまに踵を返し、マティリアの元へと向かう。
そんな彼女の周りには、予想を遥かに凌ぐたくさんのヴァンパイア達が群れが成していて、とばっちりでコチラに向かってくる奴等を不意打ちの跳躍で避けながら、無駄な労力を避けた。
「…高いな」
あのクソ重たい純銀製のブーツが無い為に、うまく力を調節出来ず、ヤケに高く跳びすぎた事に小さく舌打ちする。
戦いにおいて、自分の能力を把握しきれないのは、致命的な欠点に繋がり、場合によっては敵にあげ足をとられる事もあるのだ。
だが、今はそんな懸念に捕らわれている暇はない。
「純血って、何の事だ」
ヴァンパイア達によって、すっかり荒らされた柔らかい畑の土の上に着地しながら、あたしはマティリアに問いかけた。
自分の長い黒髪の毛先が、ついた手と片膝と一緒に土に埋もれる。
「わたくしと兄の事ですわ」
自分が立つ切り株の横に、着地して来たあたしに一瞥をくれる事もなく、マティリアはスクッと背筋を伸ばしたまま冷然として言い放った。