へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「コイツらと、何が違う?」

それを手と膝についた土を取り払いながら立ち上がり、深く言及する。


ある一程度の距離から近付いて来ない奴等を見て、随分マティリアは恐れられているんだと、確信した。



「"何が違う"?」

あたしの問いかけの言葉を小さく繰り返し、マティリアは至極可笑しそうに鼻で笑い声を漏らすと、金緑色の瞳の輝きを強くする。



「お姉様、笑わせないでくださいな。こんなクズ野郎共とわたくし達が、同等の存在のハズがありませんわ」


──…そう、それはまさに、"戦闘開始"を告げるコールとなった。




今のマティリアの言葉を十分な挑発行為だと受け取り、真っ先に塀をぶっ壊し敷地内に侵入して来ていたあの男が、遠吠えにも似た雄叫びで天空に向かって吠える。


それは鼓膜をビリビリと震わせ、ただの不快な音にしか聞こえないあたしは耳を塞ぐが、同じ種族にだけは聞き取れるのであろう伝達音に、マティリアは顔を歪ませた。



「かかって来なさい、クズ野郎共」

そして、隣にいたあたしにさえも聞こえない程のその小さな呟きは、人間よりも何倍もいい聴覚を持つヴァンパイアの耳には、よく届く。


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