へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
逆上したように、元より赤黒い肌を持つ上半身裸のリーダー格らしき男が吠え、それを皮切りにずっとマティリアの前で待機していた手下達が一気に襲いかかって来た。
どんなに一匹一匹が劣悪で低脳に見える容姿をしていようと、それらが三桁にも及ぶ数でかかって来た日には…流石のあたしも少し怯む。
奴等との戦いにすっかり慣れきっているマティリアは、雪崩れ込んでくる有象無象の衆を高い跳躍でかわし、まるでゴミを掃き捨てるホウキみたいな活用法で、たくさんのヴァンパイア達の体を爪で薙(な)いだ。
その豪快な戦いっぷりを目にしながら、あたしも負けじと、足元にあったクワの柄を踏み、回転しながら頭上に上がるそれを伸ばした腕でキャッチし、向かってきたヴァンパイアの顔に突き刺す。
サラリ、と幻影のように崩れて消える命を目の前にしつつも、その余韻が消えぬ内に、体を右回りに旋回させ周囲にいた奴等をクワの先で一気に殺いだ。
左足を軸に回転する視界の中、重力に伴ってなびく自分の髪間から、一切の攻撃も受けずそこに佇むマティリアの姿を見とめ、反対側の足で踏ん張り回転を止める。