へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
すると、それを好機と見たヴァンパイアが一匹、群れから飛び出してマティリアの背後に襲いかかる。
少なからず問答に意識が集中していたあたしはハッとし、急いでクワの先を振りかざすが…すぐに、徒労に終わった事を知った。
「お姉様は、コイツらの事を見てどう思われますの?」
一切に振り返る事もなく、しっかりと前を見据えたままで、背後に突き出した裏拳でヴァンパイアの顔を潰しているのを見て、ブルッと背筋に悪寒がはしる。
あの時…家の中で、マティリアの手刀を受けなくて本当に良かったと、心の底から思った。
そして、その問いに対する答えを考えようとした矢先、耳に届いて来た下卑(げひ)た笑いと不快なまでの嗄れ声に、そちらに視線を移す。
「マティーちゃあぁ~~ん、早く死んでくれよおぉ」
どう見ても似合わない猫撫で声なんかを出し、ギィギィと手持ち無沙汰に爪で地面を引っ掻いているソイツの様子に、更なる嫌悪が高まった。
見目はどこからどう見ても醜悪な下級ヴァンパイアなのに、その言動には少なからず理知的なところが見受けられるのが、あたしの不快指数をあげて止まない。