へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「オイ、殺れ」
あまつさえ、いかにも"偉ばった"態度で、首と指を左右に傾け周りのヴァンパイア達にそう命令を下したのが、最高に腹立たしかった。
「ぐっ…」
それに自分の中の憎悪が、チリッと沸くのを感じながらも、まさに"ツルの一声"で一斉に襲いかかって来たヴァンパイア達の数の多さに、流石のあたしも地面に平伏す。
拍子に、唯一の武器だったクワも手離してしまい、今度こそ完全に無防備状態となった。
もちろん、すぐさま飛び起きてそれを取り返そうともするが、うごめくヴァンパイア達の足に蹴られ、ますます遠くに転がって行ってしまう。
思い通りにいかないもどかしさと苛立ちに素早く舌打ちし、背中・腕・足…と、それぞれに絡まりついてくるヴァンパイアの重みに、必死に耐えた。
「…なぁ、このオンナ…タベテいいノ?」
鼓膜の内側で囁かれたのかと思う程、近くで聞こえて来た声に、思わず体がとびはねる。
だらしないくらいに滑舌が悪く、辿々しい喋りとは相反して、『タベル』と言われたその一言に、強い戦慄がはしった。