へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
もちろん、最初は何が起こったか分からずに困惑する。
だが、次の瞬間には、コロコロと眼前に転がって来た薄茶色の物体を見て、驚愕した。
「イ、モ…?」
そう、それはたった一個の"ジャガイモ"
凹凸の激しい地面を不器用に転がり続け、逆にピタリと器用にあたしの目の前で止まったのに…最早、どんな感想も思い浮かばなかった。
…何故、ジャガイモなんだ?
しかし、変わりにそんな当然の疑問が思い浮び、同時に周囲にいたヴァンパイア達からも、口々に疑念の声があがる。
「…いも」
「ジャガいも…」
「…ジャガイモだ…」
まるで伝染するウイルスか何かのように、ザワザワと波及していくジャガイモ謎の連鎖に、辺りが異様な雰囲気に包まれた。
「姉さーん!!」
そうして、この一連の謎の出来事が、そう呼び掛けた張本人の仕業である事に、あたしは薄々勘づき始める。
「メフィスト…」
視線を向けた先の奴が、白レースフリフリの装飾過多のエプロンをつけていようと、別に構わなかった。
ただ、腕に抱え込まれた大量のジャガイモの存在に、目が釘付けになる。