へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
すると、案の定…面白いくらい嫌悪に顔を歪めて怒りをぶつけてくる男に、あたしは吹き出しそうになるのを必死に抑えた。
「…いい度胸だな、フィアーネ・モア。このクイ-ル東支部討伐隊、隊長補佐に向かってそんなデカイ口を叩くとは……」
「はいはい、あたしは肩書きなんてどーでもいいんだよ。要は、現場に出て強いかどうかだ」
またダラダラと長い説教を始めそうなソイツに向かって、あたしは足を組み替え挑戦的な目を向ける。
そして、それを聞き一瞬言葉を詰まらせた男に、思わず口端があがるのを堪えきれなかった。
「その点、隊長補佐様は一度も現場に出た事がないから、どんな実力があるのか分からないんですよねぇ」
わざとらしく、嫌みたっぷりに言ってやる。
「それは……」
「それは?“本部総司令官”のお父様が、可愛い息子を心配して現場に駆り出さない為?」
座っていた聖堂のイスからゆっくりと立ち上がり、苦渋に歪むその顔を覗き込んだ。
こう言う口が達つ奴を言い負かすのは、最高に気分がいい
「いいよなぁ、机上の空論を並べ立ててるだけで命を懸けてる気になれる奴はさ。
いくら、現場で同士がゴロゴロ殺されようとも、ちっとも痛くも痒くもないんだもん」