へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
その言葉に、男がカッと目を見開いたのが分かった。
「お前……ッ!」
そして
昂る感情のまま、あたしの首に手をかけようとした男の足を、思い切りヒールの先で踏んづけてやる。
その痛みに思わずうずくまった男の頭頂部を見下ろし、フンと鼻で笑った。
「否定出来ないの?“坊っちゃん”」
「……っ!」
半分、充血した目で苛立ち紛れに睨みあげて来たソイツの耳元に揺れるピアスの数を見て、あたしは眉間にシワを寄せる。
「…あんた、またピアスの数増やしたのか?」
「…別にいいだろ、そんな事」
それに、まるでふて腐れた子供のように、フイッと顔を逸らすと、長い自分の横髪でその耳元を隠した。
「その内、耳が無くなっても知らないからな」
「…ウルサイ、放っとけ」
そう言って、不満げな顔でスッと立ち上がったソイツの全身からは、チャラチャラとした金属音が奏でられる。
…それは、ソイツが身に付けている装飾品の音
足の爪先から、指の先まで…全身シルバーのアクセサリーで身を固めるその姿は、どっからどう見ても“お坊っちゃま”
本人がどう否定しようが、その“軽さ”だけは誤魔化しきれない。