へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「煙い」


「だったら、お前が消えればいいだろ。フィアーネ・モア」


「何者かが、何らかの目的で一方的にヴァンパイアを殺めていったと考える方が有力だろうね」


見事に足並みが揃わない会話でさえも、この三人ならでは成立する不思議さは相変わらずだ。


「残念だったな。あたしが今目の前から消えるより、お前がこの世から消える方が早いだろう」


「…で、その犯人は?そして、目的は?」


「分からないから、本部も警戒してるんだよ。いくら端数染みたヴァンパイアとは言え…それを単独で殺すとなると、かなりの実力を持ち合わせてないと出来ない事だからね」


「…そいつ、無傷だったのか?」


「フィアの話によると、そうらしいね。そこには、争った何の痕跡も見当たらなかったと…」




「ヴァンパイア・ブラッド」


そんな二人の会話を押しきるように低く呟いたあたしの声が、三人きりの夜闇の聖堂に静かに響く。


そして、それに呼応するように……一瞬息を詰めたウェルシーの呼吸と、反対に小さく息を吐いたキルバッシュの呼吸音が、あたしの耳に届いた。



それで分かる。

二人は緊張していると──…



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