へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「あの‘へたれ男’…目を覚ましたのか?」
そうだ、そう言えばスッカリ忘れていた。
クイール途中に出会ったあの謎の男…事情を聞くまでもなく、何故か深い眠りについてしまった為
仕方無く、背負ってココに連れ帰って来ていたのだった。
「覚ましたよ…ただその代わり、“姉さんに会いたい”って、泣き叫んでばかりいるけどね」
至極、弱りきったようにそう告げるキルバッシュに、団員がどれほど手を焼いているかが何となく悟れた。
「……」
嫌でも想像がつく。
アイツは、きっと“姉さんに会いたい~”とか、何とか言って泣きべそをかいて喚きまくってるに違いない
「…分かった。早い内に、あたしが行った方が良さそうだな」
諦めと憐憫の気持ちを込めてそう言ったあたしに、食いついてきたのはウェルシーだった。
「オイ…お前が、男連れで帰ってきたのか?」
それは明らかに、侮蔑以外の何ものでもないように感じ取れた。
「何だよ、悪いのか」
新たな火種となりかねない敵意も含んで、あたしはそう言葉を返す。