へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
侵入
「その男の名前は?」
「知らん」
「歳は?」
「知らん」
「…住居地区は?」
「知らん」
「……本当に人間か?」
「知らん」
そう回答した何度目かの同じ返答に、ウェルシーは本当に心の底から呆れたように、溜め息を吐いた。
そして、あたしを挟んだ左隣では…それを見ていたキルバッシュも、同じように苦笑をこぼしていた。
「お前…っ、もっと危機感を持て!そいつがヴァンパイアで、ココの内部に入り込む事を目的としていたらどうする!?」
汚くツバを飛ばしながら、怒声を浴びせてくる右隣にいるウェルシーに、あたしは嫌悪の眼差しで睨み返して答える。
「心配しなくとも、あんなへたれ男がヴァンパイアのハズなんかない。ちゃんと、聖水にも怯まなかった」
「バカ者!それが、浅はかだって言ってるんだ!!きちんとした精密検査もしないで、人間かヴァンパイアかなんて判断するな!」
結局、あたしがどう言っても聞く耳を持たないウェルシーに、もはや会話する気も失せ、わざとらしく耳を塞いでやった。