へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「お前…ッ、人の話を聞く時はきちんと目を見ろ!!」

実力行使とばかりに、両手首を掴んでくるウェルシーに、激しく抵抗した。


「……っ、やめろ!あたしに、気安く触るな坊っちゃん!!」


「お前こそ、その呼び方やめろ!!」


狭い箱の中で、ピィーピィーギャーギャー喚きたてていると、いつもの光景にさほど驚きもしないキルバッシュが、冷静に指摘をしてくる。



「こらこら、あんまり派手に暴れると、またエレベーター止まっちゃうよ」

そう言いつつも、自分は被害のないように、ちゃっかりエレベーターの個室の隅に避難していた。



「だって、キル…っ!こいつが……ッ!!」


「ほら、すぐキルバッシュに頼るじゃないか!この腑抜けめ!!」



「何ィ!?お前こそ、いつも一人でクイールしに行ってる割りには、大した成果もあげられていないだろうが!!」


「はっ!たまたま、ヴァンパイアと出会わないだけだよバカ!!」



「く…っ、副隊長に向かってバカとは何だ!?バカとは…!!」


「そうか、悪かったな。じゃあ、阿呆だ」


永遠に終わらないではないかと思われる口論に終止符が打たれたのは、ガクンッと言う大きな衝撃と共に、下降していたハズのエレベーターが止まったからだった。



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