へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「あーあ、止まっちゃったね…」
マズイ、と青ざめるあたしとウェルシーをよそに
キルバッシュは、手慣れた感じで何度か手動のレバーを上げたり下げたりして、機能停止を確かめてから、すぐにイヤホンの通話口に向かって話しかけた。
「あー、もしもし、聞こえる?うん、そう…うんうん、そう。
はいはい、だから宜しくね」
たった5,6秒の会話で用件を終え、キルバッシュは小さく息を吐いた。
「……」
「……」
狭い個室に、嫌な沈黙が漂う
「…お前のせいだからな、フィアーネ・モア」
「はぁ?人に罪を全部なすりつけんなよ」
幾分、声をひそめてコソコソとまだ口論を続けるあたし達を、アンティーク調に施されたエレベーターのシャンデリアの光が、チカチカと黄色い明滅を繰り返しながら照らし出していた。
黒い格子が不規則に交差する扉の向こうには、冷たい鉄の塊が暗い闇を携えて潜んでいる。
「…フィアとウェルシーってさぁ」
「お、おう!?」
「な、何だ!?」
気まずい沈黙を破って解き放たれた言葉に、あたしもウェルシーも背筋を緊張させて答えた。