へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「…争いごとは嫌いだけど、それが私達の使命だからね」
そう言うや否や、懐から2丁の拳銃を取り出してあたし達に向かって構えるキルバッシュに、成す術もなく固まった。
「お…おおおい、キル!何やってんだよ…正気か!?」
「これが、冗談に見える?」
動揺して声を裏返らせるウェルシーとは反対に、キルバッシュは常と変わらぬ至って冷静な声音で紡ぐ。
チカチカと明滅する古い照明が、透明度の高い彼のターコイズグリーンの瞳を不気味に浮かび上がらせていた。
「キ…」
「悪いけど、弾は無駄遣いしたくないんだ」
呼び掛けようとしたウェルシーの言葉を遮り、彼は一歩距離を縮めてくる。
眼前に迫った暗い銃口の穴に、抗う手段も忘れて呆然とした。
「…!」
その時、微かに耳に届いた奇怪な風の唸りに、あたしはハッとする。
そして、慌てて視線を彼に配ると、その瞳が満足そうに頷いているのが見てとれた。