へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「…争いごとは嫌いだけど、それが私達の使命だからね」


そう言うや否や、懐から2丁の拳銃を取り出してあたし達に向かって構えるキルバッシュに、成す術もなく固まった。



「お…おおおい、キル!何やってんだよ…正気か!?」


「これが、冗談に見える?」

動揺して声を裏返らせるウェルシーとは反対に、キルバッシュは常と変わらぬ至って冷静な声音で紡ぐ。


チカチカと明滅する古い照明が、透明度の高い彼のターコイズグリーンの瞳を不気味に浮かび上がらせていた。



「キ…」


「悪いけど、弾は無駄遣いしたくないんだ」

呼び掛けようとしたウェルシーの言葉を遮り、彼は一歩距離を縮めてくる。


眼前に迫った暗い銃口の穴に、抗う手段も忘れて呆然とした。



「…!」

その時、微かに耳に届いた奇怪な風の唸りに、あたしはハッとする。


そして、慌てて視線を彼に配ると、その瞳が満足そうに頷いているのが見てとれた。


< 50 / 225 >

この作品をシェア

pagetop