へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「キル…!目を覚ませ!!そんなバカな事はや……」
「バカはお前だ!!」
錯乱したと思い込んだキルバッシュを諫めようと、口を開いたウェルシーの顔を横から蹴り飛ばし、あたしはエレベーターの個室の天井にぶら下がった。
何の躊躇もなく全力で蹴り飛ばされたウェルシーは、“ぐぇっ”と変な声を漏らしてエレベーターの片隅に転がる。
そして、それと同時に…あたし達が立っていた場所の壁が、外側から派手にぶっ壊された。
激しい土煙が狭い個室内に充満し、一瞬の内に視界が霧煙に閉ざされる
そのせいもあってか、キルバッシュもなかなか照準を定められず、すぐには発砲をしなかった。
「……ッ…てぇ‥っ、いきなり何するんだ!バカ女!!」
唯一、事情を分かっていないウェルシーだけが、ノンキに声を荒げる。
「バカはお前だ!ヴァンパイアが侵入して来たんだ!!分からないのか!?」
スタッと天井から飛び降り、土煙に覆われた辺りを警戒する。
「……ヤケに静か」
「そうだね」
キルバッシュとゆっくり背中を合わせながら、耳が痛いほどの静寂に、来るべき襲撃に備えて身を引き締めた。