へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
「ヴァ…ヴァンパイ‥ア…?」
そうして、半信半疑な感じで聞き返して来たウェルシーを切っ掛けに、あたしとキルバッシュが立っていた天井から、細長い鋭利なものが突き立てられる。
赤黒く緩やかな弧円を描いて先端に向かって鋭いそれは、間違いなくヴァンパイアの持ち合わせている爪に他ならなかった。
「‥く…っ…」
「フィア、大丈夫!?」
すんでの所でしゃがみ込んでそれを避けたあたしは、肩に少しだけかすった引っ掻き傷の痕を見て舌打ちした。
「ナメたマネを…ッ」
そして
人の身長は、ゆうに越えるであろう長い爪の切っ先をかわしながら、出来るだけ重心を低くして天井に向かって発砲し続けた。
ガスガスと天井に開いていく穴と、ポロポロと床にこぼれ落ちるコンクリートの破片と薬莢に、焦げ臭い匂いがまた辺りに充満する。
「バカ!撃ちすぎだ!!」
流れ弾に当たらないように、頭を抱え姿勢を低くしていたウェルシーが、煙さに咳き込みながら叫んだ。
「…チッ」
しかし、それに弾切れを悟ったあたしは、小さく舌打ちをして銃をガーターベルトのホルダに戻す。
「フィア…っ、本部から支給の弾数も少ないんだから、大事に使うんだよ」
珍しく少し早口にそう言ったかと思うと、キルバッシュは軽やかな身のこなしで、破壊された壁の穴からエレベーターの上部へと飛び移った。