へたれンパイア~バイオレンスな生贄~
すぐさま立ち上がって服の埃を払い、ツカツカとエレベーターの入り口付近に向かう
「…オイ?」
すっかり、傍観体勢に入っていたウェルシーは、そんなあたしの行動に驚いているようだった。
ちゃっかり煙草までくわえ、火をつける気満々だった奴を睨み、声高らかに宣言してやる。
「あたしは、ヴァンパイア全てを恨んでいる。
だからこそ、今目の前に奴等がいるのに、何もせずに傍観を決め込むなんて出来るハズがない」
そう言い終えると同時に、右手に掴んでいたレバーを引き下げ、ドアと繋がっていた支柱部分を折った。
ガクン、と半フロア分エレベーターが下がり、ギギギギ…とエレベーターを最上階から地下まで繋げるロープが、奇怪な音を立てる。
それは、カウントダウンの合図だった。
「……」
「……」
エレベーターの“手動レバーを破壊した”あたしを眺め、ウェルシーは呆然とくわえた煙草を床に落としていた。
緊急用の予備ランプだけの薄暗い光の中で、あたしとウェルシーは無言で見つめ合う。