へたれンパイア~バイオレンスな生贄~


「お前…」

信じられないものを見た、と言ったような表情で、ウェルシーは半開きの口から掠れた声を漏れ出させた。


その間にも、刻一刻とエレベーターを支えるロープは、不可解な音を立ててその箱を下降させていく。



「これしか方法がない」

まだ、何か言い足りなさそうな彼を遮り、あたしはキッパリと告げた。


そして、目の前にスッと左腕を差し出すと、その顔色が変わる。



「……いつだ…!?」


「さっき、お前が庇ってくれた時」

敢えて、ぞんざいな口調でそう言ってやると、チッと小さく舌打ちして、重たい腰をあげたウェルシー


その顔つきは、さっきまでとは全然違うものだった。



「それじゃあ、お前を守った意味がないじゃねぇかよ」

ポケットから新しい煙草を取り出し、口にくわえる。


「そうね」

それにそう答えながら、あたしは折り取ったレバーを逆手に持ち、握り具合を確かめた。


半壊した狭い室内に、もくもくとウェルシーがふかす煙草の煙が漂う。


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